明治15年「高等の普通科を授け、優良なる婦女を養成する所とす」の教則大旨により女子に対する高等教育が始まって100年になります。
その間本県においては、特に封建時代からの遺風として男子教育が優先し、女子の教育は結婚の条件を充足するためのもの以外の何物でもないという観念から女子教育は軽視されがちでありました。
このような社会的風潮に加え、経済的理由により向学心をもやしながらも高等教育を受ける機会を逸するものの多い中で、祖母「上野カネ」は県費生として奨学資金を受けながら鹿児島女子師範学校を卒業し、教べんをとることができました。
祖母が当時の奨学資金の恩恵に浴することができなかったならば、高等教育を受けることもできず、平凡な家庭婦人として終ったであろうと思うと奨学資金の有難さを痛感するものであります。
このたび祖母の死去にあたり、子女相集って協議し、亡祖母の遺志をつぐためには、女子教育のために献身しようとする学生に経済的な支援をすることが最良であるということになり、別紙財産目録記載の基金を寄附することにいたしました。
この基金が、本県女子教員養成のために活用され、よりよい教育を受ける機会をより多くの人にお分けすることができれば遺族として望外の喜びであるとの趣旨からであります。
この趣旨により、ここに財団法人上野カネ奨学会を設立し、女子教育の振興を図り、もって女性の社会的地位の向上発展に寄与しようとするものであります。